色版
いろはん
名詞
標準
文例 · 用例
自分は不幸にして未来派の画やカンジンスキーのシンクロミーなどというものに対して理解を持ち兼ねるものであるが、ただ三色版などで見るこれらの絵について自分が多少でも面白味を感ずる色彩の諧調は津田君の図案帖に遺憾なく現われている。
— 寺田寅彦 『津田青楓君の画と南画の芸術的価値』 青空文庫
先ず従来の天然色写真でやや成効し、且つ用いられたのは、雑誌の口絵などで御馴染の三色版である。
— 寺田寅彦 『天然色写真新法』 青空文庫
なおこの種のものには一枚の原色版のために六枚以上種板を使うのもあるそうな。
— 寺田寅彦 『天然色写真新法』 青空文庫
古びた唐草模樣の壁紙の處處はげかかつた四方の壁には、三色版の平凡な風景畫が一つ掛かつてゐるきりで、がらんとした、空氣の冷えきつた部屋の中には裝飾品らしい何物も見えなかつた。
— 南部修太郎 『ハルピンの一夜』 青空文庫
「お化けの絵だよ」 いつか竹一が、自分の二階へ遊びに来た時、ご持参の、一枚の原色版の口絵を得意そうに自分に見せて、そう説明しました。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
自分なども、ゴッホの原色版をかなりたくさん見て、タッチの面白さ、色彩の鮮やかさに興趣を覚えてはいたのですが、しかし、お化けの絵、だとは、いちども考えた事が無かったのでした。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
蓄音機でいい音楽を聞くのと、三色版で名画を見るのとはちょっと考えると似ているようで実は少し違ったところがあると思う。
— 寺田寅彦 『蓄音機』 青空文庫
私の考えでは、三色版が色彩に対しても不忠実であるのみならず、画面の微妙な光沢や組織に対し全然再現能力のないのに反して、良い蓄音機では音色や強弱の機微な差別が相応に現われ、そして最も重要な要素と考えられる時間関係がかなり厳密に再現される。
— 寺田寅彦 『蓄音機』 青空文庫