蹴散
蹴散
名詞
標準
文例 · 用例
あなたに出来る精一ぱいの反抗は、たったそれだけなのですか、鳩売りの腰掛けを蹴散らすだけのことなのですか、と私は憫笑しておたずねしてみたいとさえ思いました。
— 太宰治 『駈込み訴え』 青空文庫
こんな男は、自分をあらわに罵る人に心服し奉仕し、自分を優しくいたわる人には、えらく威張って蹴散らして、そうしてすましているものである。
— 燭をともして昼を継がむ。 『花燭』 青空文庫
自分は酔って銀座裏を、ここはお国を何百里、ここはお国を何百里、と小声で繰り返し繰り返し呟くように歌いながら、なおも降りつもる雪を靴先で蹴散らして歩いて、突然、吐きました。
— 太宰治 『人間失格』 青空文庫
五六人の足音が、塀の向側でどやどやと椅子や箱を蹴散らしている。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
そして、静かに、そこらにある車や、木切れなどを蹴散らさないように用心しいしい歩んだ。
— 黒島伝治 『パルチザン・ウォルコフ』 青空文庫
森の中にはカルムイコフが捕虜を殺したあとを分らなくするために血に染った雪を靴で蹴散らしてあった。
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫
彼の靴は、固い雪を蹴散らした。
— 黒島伝治 『渦巻ける烏の群』 青空文庫
そうして朝の光の溢るる露の草原を蹴散らして凱歌をあげながら家路に帰るのである。
— 寺田寅彦 『夏』 青空文庫