飛ぶ火
とぶひ
名詞
標準
文例 · 用例
一人起きて窓をひらけば、夜風はつめたく肌にふれ、闇夜の暗黒な野原を飛ぶ、しきりに飛ぶ火蟲をみる。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫
たまたまに我や旅行き、行きなづみ振りさけ見れば、妻と来てつつしみ仰げば、あなかしこ照る日もわかず、暮れゆけば雲巻き蔽ひ、霹靂はためくさへに、稲光|青の火柱、火ばしらの飛ぶ火のただち、また、とどろ雹ぞ飛びたる。
— 北原白秋 『観相の秋』 青空文庫
たまたまに我や旅行き、行きなづみ振さけ見れば、妻と来てつつしみ仰げば、あなかしこ照る日もわかず、暮れゆけば雲巻き蔽ひ、霹靂はためくさへに、稲光|青の火柱、火ばしらの飛ぶ火のただち、また、とどろ雹ぞ飛びたる。
— ――長歌体詩篇二十一―― 『観想の時』 青空文庫
そのほか駅の構内で怒鳴りまわる貨物仲仕の声、魚市場の問屋のセリ声、物売の声、下足番の声、又は狂い飛ぶ火花と、轟々たる機械の大噪音の中に、一糸を乱さず、職工を叱※する錆びた声……なぞの中には、松籟、濤韻と対比すべき或るものを含んでいることを、よく気付かせられる。
— 夢野久作 『「生活」+「戦争」+「競技」÷0=能』 青空文庫
エヌ・エィチ・ケー」 飛ぶ火の玉 ポコちゃんがしぜんに、ねむりからさめたときには、艇の外はもうまっくらであった。
— 海野十三 『宇宙の迷子』 青空文庫
大きな体をした悪性の藪蚊で、子供や女中の中には螫された跡が飛ぶ火と云ふ発疹物のやうにじくじくと気持悪るく膿を持つて両脚一面にお医者さんから繃帯をして貰つて居る者さへある。
— 與謝野晶子 『隣の家』 青空文庫
空疎な独白から眼をあげ肩をそびやかして一切の倦怠を笑い飛ばした時僕等はお互の若い眼の中に未来のコンミュニズムの輝きの発止と飛ぶ火花をおぼろげに認めたのだ僕等は十三だった!
— 献じる詞(牢獄にて) 『青春』 青空文庫
落ち葉は、ちょうど、ふいごを鳴らすと飛ぶ火の子のように、空を駆けて、ばらばらと雨まじりの風とともに、空へ吹きつけたのでした。
— 小川未明 『般若の面』 青空文庫