差し出で
さしいで
名詞
標準
文例 · 用例
父親はいつのときも、賛成も反対もせず、つまりは煮え切らず、ぼそぼそ口の中で呟いているだけだったが、おたかはまるで差し出でて、仲人に向い、「格式の違うことあれしまへんか」 と、いつもこの調子で、仲人を怒らしてしまい、その都度簡単に話は立ち消えたのだ。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
……お見受けいたせばご浪人、我らの意志に賛せられ、一揆にご加担くだされたく、差し出でました次第にござります」 九十郎は刀の血を、大蔵の差し出した手拭いでぬぐい、鞘に納めて黙然としていたが、「加担いたすでござりましょうよ」 やがてポッツリとそういった。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
さしたる貫目も持ちあわさぬくせに、なにかにつけて差し出で、おしつけがましく取り仕切る癖があるのは、勘弁なりかねる。
— 久生十蘭 『ひどい煙』 青空文庫
かの清少納言もまた赤芽には感心してこれを讃美し、彼れの『枕の草紙』には「そばのき、はしたなき心地すれども花の木なども散り果てゝ、おしなべたる緑になりたる中に、時も分かず、濃き紅葉の艶めきて、思ひがけぬ青葉の中より差し出でたる、めづらし」と書いている。
— 牧野富太郎 『植物記』 青空文庫
清輔『奥儀抄』のこの歌の註にも、「武隈のはなはとて山の差し出でたる処のあるなりとぞ近く見たる人は申せし」とある。
— 柳田國男 『地名の研究』 青空文庫
『落葉集』巻一に、ハナ山、山の差し出でたる処をいう、塙に同じ。
— 柳田國男 『地名の研究』 青空文庫
ハナワ、塙と書けり、山の差し出でたる処なりとあるのはあるいは『奥儀抄』によったのかも知れぬが、現今|常陸稲敷地方で高い地所をハナワというのは事実である(茨城県方言集覧)。
— 柳田國男 『地名の研究』 青空文庫
直義の処置は、よくお胸をふくんで、いたしましょう」「女の差し出で口には似ますけれど。
— 湊川帖 『私本太平記』 青空文庫