遡
遡
名詞
標準
文例 · 用例
これらはその成立上の存在規定に遡って区分の原理を索める場合に、おのずから二群に分かれる。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
そこで遡江部隊の遡という字からシンニユウを除いた朔だとか、国民に愬ふといふ愬から心を除いた上の字だとか言つてみるが、これもまた一向に利き目がない。
— 萩原朔太郎 『名前の話』 青空文庫
さういへばずつと過去に遡つて、科學の研究に一生を委ねようと決心した時にも、彼れは自己をある程度まで殺してかゝる覺悟をした苦痛の覺えがあつた。
— 有島武郎 『實驗室』 青空文庫
さまざまな化粧品や、真珠のはまった金の耳輪や、蝶形のピンや、絹の靴下や、エナメル塗った踵の高い靴や、――そういう嵩ばらずに金目になる品々が、哈爾賓から河航汽船に積まれて、松花江を下り、ラホスースから、今度は黒竜江を遡って黒河へ運ばれてきた。
— 黒島伝治 『国境』 青空文庫
河の流れをたどって行く鉛筆の尖端が平野から次第に谿谷を遡上って行くに随って温泉にぶつかり滝に行当りしているうちに幽邃な自然の幻影がおのずから眼前に展開されて行く。
— 寺田寅彦 『夏』 青空文庫
その頃はまだ珍しかったスエズ運河を見、蜃気楼に欺されたりして、カイロに着き、そこから小船に乗ってナイル河を遡った。
— 寺田寅彦 『レーリー卿(Lord Rayleigh)』 青空文庫
一めん波が菱立って来た放水路の水面を川上へ目を遡らせて行くと、中川筋と荒川筋の堺の堤の両端を扼している塔橋型の大水門の辺に競走のような張りを見せて舟々は帆を上げている。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
彼は建築史の研究を近代からだん/\原始へ遡つて行つた。
— 岡本かの子 『夏の夜の夢』 青空文庫