杖代わり
つえがわり
名詞
標準
文例 · 用例
」 と、一つ腰を伸して、杖がわりの繻子張の蝙蝠傘の柄に、何の禁厭やら烏瓜の真赤な実、藍、萌黄とも五つばかり、蔓ながらぶらりと提げて、コツンと支いて、面長で、人柄な、頤の細いのが、鼻の下をなお伸して、もう一息、兀の頂辺へ扇子を翳して、「いや、見失ってはならぬぞ、あの、緑青色した鳶が目当じゃ。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
」元気づいた金兵衛はこういうと、杖がわりについていた血に濡れた抜き身を、小脇に引っさげて走り出した。
— 国枝史郎 『娘煙術師』 青空文庫
彼女は杖がわりの洋傘を持ちなおし、佃のあとに跟いて人波をかき分けようとする老人に云った。
— 宮本百合子 『伸子』 青空文庫
孝之進は、ちょうど盲人の通りに、上半身を心持後へそらせ、杖がわりに持っている洋傘で、前方を探り探りたどって行った。
— 宮本百合子 『日は輝けり』 青空文庫
此の日壇上にのぼられた先生は杖がわりの粗末な竹竿を無雑作に壁にたてかけ椅子に腰かけて右手を耳のうしろへ、一語一語自身の言葉を確めるように話される。
— 第二部 混混録 『牧野富太郎自叙伝』 青空文庫
座敷を掃いていたらしいが、箒を杖がわりにして、痛そうに顔をしかめている。
— 火野葦平 『花と龍』 青空文庫