涙痕
るいこん
名詞
標準
文例 · 用例
」 といきつくづくぢつとわが顔をみまもりたまふ、涙痕したたるばかりなり。
— 泉鏡花 『竜潭譚』 青空文庫
訣れは憤りと呪いを置土産にいで立ったものの、渡海の夜船の雨泊中に娘の家の庭から拾って来た福慈岳の火山弾を取出してみて、それが涙痕の形をしており、魚の形をしており、また血の色をしているところから福慈岳神としての娘の苦労を察し、決意のほどもほぼ覗えた。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
」 といきつくづくじっとわが顔をみまもりたまう、涙痕したたるばかりなり。
— 泉鏡花 『龍潭譚』 青空文庫
並に訣別の書で、所々涙痕を印している。
— 森鴎外 『渋江抽斎』 青空文庫
ドスト氏は躬ら露國平民社界の暗澹たる境遇を實踐したる人なり、而して其述作する所は、凡そ露西亞人の血痕涙痕をこきまぜて、言ふべからざる入神の筆語を以て、虚實兩世界に出入せり。
— 北村透谷 『罪と罰(内田不知庵譯)』 青空文庫
どうせ六甲へ行ったらホテルまで登ってしまえばきっと涼しい、大橋房子の涙痕今猶新なり、だろうけれど。
— 宮本百合子 『日記・書簡』 青空文庫
気のせいか、一筋の涙痕が頬を伝うて流れているもののように見えますけれども、やはりよく眠っているには睡っているに違いありません。
— 黒業白業の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
」〔哀鴻侶ヲ叫ビテ水雲|昏シ/手ニ到ル凶函涙痕|湿フ/ノ如ク/松堂月落チテ温存ヲ失フ/俊才多ク出ヅ高陽里/遺業久シク伝フ通徳門/天際少微今見エズ/誦スルニ招隠ヲ将テ招魂ニ当ツ〕『春濤詩鈔』にこの挽詞を天保八年の集に編入しているのは誤であろう。
— 永井荷風 『下谷叢話』 青空文庫