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推摩

推摩
名詞
1
標準
文例 · 用例
所が最近になって、この異様な神秘教団に不可解な人物が現われた、と云うのは、推摩居士と称する奇蹟行者の出現だった。
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それが奇怪至極にも、尼寺の鉄則を公然と踏み躪っているばかりではなく、推摩居士は竜樹の再身と称して、諸菩薩の口憑や不可思議な法術をも行い、次第に奇蹟行者の名を高めるに至った。
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そして、端なくもそれが起因となって、推摩居士の本体が曝露されるに至ったのである。
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「夢殿と申しまして、以前は寺院楽と黙行の修行所に当てて居りましたのですが、最近では此処で、推摩居士が祈祷と霊通を致すようになりまして……」 そこには、黒漆塗の六枚厨子扉があって、青銅で双獅子を刻んだ閂の上には、大きな錠前がぶら下っていた。
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「これが推摩居士なので御座います」と、この凄惨な場面に適わしからぬような、恍とりとした声で、盤得尼が云った。
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「所が、正午頃夢殿に入られてから発見される一時十五分迄の間と云うものは、一向に何んの物音もなく、それに、嗄れ声一つ聴こえませんのでしたが……」 推摩居士の年齢は略々盤得尼と頃合だけれども、その相貌からうける印象と云えば、まず悉くが、打算と利慾の中で呼吸している、常人以外のものではなかった。
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所が、その相貌とは反対に、推摩居士の表情姿体を観察して行くと、それには、恐怖驚愕などと云うような、殺人被害者固有の表出を全く欠いていた。
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恐らく、到底この世にあり得ようとは思われぬ、或る異常な情景が、推摩居士の眼前に現われ出たのであろう。
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