枳殻
からたち
名詞
標準
文例 · 用例
台所に杯盤の音、戸口に見送りの人声、はや出立たんと吸物の前にすわれば床の間の三宝に枳殻飾りし親の情先ず有難く、この枳殻誤って足にかけたれば取りかえてよと云う人の情もうれし。
— 寺田寅彦 『東上記』 青空文庫
聞いて下さいやしこうじゃわいな、お前さん、過日切通の枳殻寺で施米があると云うから、この足で、鮫ヶ橋から湯島|下りまで、お前様、小半日|懸って行ったと思わっしゃれ、そうすると切符を渡して、なお前様、明日来い、米と引替えるというではござらぬか。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
青い枳殻の小枝などまた折りくべて、長い感冒であつたと私が云へば、私もどうやら感冒気でと、妻もわびしい。
— 北原白秋 『観相の秋』 青空文庫
が、今一つ自分としては言い残したことがあるので、足を一歩進めてつけ加えた、「それから、わたくしの畑はすぐそこの枳殻垣をお窺きになれば見えます。
— 岩野泡鳴 『猫八』 青空文庫
二の六 二人はベルツの銅像の前から枳殻寺の横を電車の通りへ出た。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫
それより此所に待つてる方が手間が掛らないでいゝ」と云つて枳殻の垣根の下に跼がんで、小石を拾つて、土の上へ何か描き出した。
— 夏目金之助 『三四郎』 青空文庫
始めのうちは小さい横町を右へ折れたり左へ曲ったり、濡れた枳殻の垣を覗いたり、古い椿の生い被さっている墓地らしい構の前を通ったりしたが、松本の家は容易に見当らなかった。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
枳殻の垣が黒ずんだ枝の上に、萌るような芽を吹いていたり、柘榴の枯れた幹から、つやつやしい茶褐色の葉が、柔らかそうに日光を映していたりするのが、道々私の眼を引き付けた。
— 夏目漱石 『こころ』 青空文庫
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枳殻(きこく)とは、ミカン科(ダイダイ、ナツミカンなど)の成熟した果実を乾燥した生薬である。健胃作用がある。
出典: 枳殻 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0