韻致
いんち
名詞
標準
文例 · 用例
「――」 これは詩人クローデルが大胆不敵にいひ除けた、「主は現代の停車場にも、劇場にもある」といつた、韻致カソリシズムの象徴かと桂子は想ふ。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫
けれども漢文くづしの文體が可いか、言文一致の細かいところへ手の屆く文體が可いかといふ事は、韻致とか、精細とかいふ點に於て一寸考へものだらうとは思ふ。
— 夏目漱石 『「自然を寫す文章」』 青空文庫
韻致とか精細とか言ふ事は取りやうにもよるが、精細に描寫が出來て居て、しかも餘韻に富んで居るといふやうな文章はまだ私は見た事がない。
— 夏目漱石 『「自然を寫す文章」』 青空文庫
だから長々しく敍景の筆を弄したものよりも、漢語や俳句などで、一寸一句にその中心點をつまんで書いたものに、多大の聯想をふくんだ、韻致の多いものがあるといふのは、畢竟こゝの消息だらうとおもふ。
— 夏目漱石 『「自然を寫す文章」』 青空文庫
韻士は力を籠めて韻致を探り、哲学者は思ひを凝らして析解を試むるも、迷宮の迷宮たるは始めより今に至るまで大に変るところはあらざらむ。
— 北村透谷 『松島に於て芭蕉翁を読む』 青空文庫
磯山寺の華鯨音なく、梅を殘して靜に暮るゝ春の夕べ、何となう面白く、仰ぎ見れば、むかつをの頂に、老松一株翼然として天を摩するさま、殊に韻致を添ふるに、しばし二階の障子を明け放して見とれけるが、忽ち空艪漕ぐ聲す。
— 大町桂月 『杉田の一夜』 青空文庫
○ 錦絵のもつあの艶美な夢心地のような韻致――と申しますか、匂いと言いますか、人の魂に滲みこんでくるあの柔かな迫力は、どうも肉筆には見られないのでした。
— ――花は霞を透してひとしおの風情があるもの―― 『浮世絵画家の肉筆』 青空文庫