掛け稲
かけいね
名詞
標準
文例 · 用例
夫人 私はね、群鷺ヶ|峰の山の端に、掛稲を楯にして、戻道で、そっと立って視めていた。
— 泉鏡花 『天守物語』 青空文庫
掛稲のきれ目を見ると、遠山の雪の頂が青空にほとばしって、白い兎が月に駈けるようである。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
と見向いた時、畦の嫁菜を褄にして、その掛稲の此方に、目も遥な野原刈田を背にして間が離れて確とは見えぬが、薄藍の浅葱の襟して、髪の艶かな、色の白い女が居て、いま見合せた顔を、急に背けるや否や、たたきつけるように片袖を口に当てたが、声は高々と、澄切った空を、野に響いた。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
「きゃあ――」と笑って、衝と駈けざまに、男のあとを掛稲の背後へ隠れた。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
その掛稲は、一杯の陽の光と、溢れるばかり雀を吸って、むくむくとして、音のするほど膨れ上って、なお堪えず、おほほほほ、笑声を吸込んで、遣切れなくなって、はち切れた。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
この勢いに、男は桂谷の山手の方へ、掛稲を縫って、烏とともに飛んで遁げた。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
」―― 掛稲、嫁菜の、畦に倒れて、この五尺の松に縋って立った、山代の小春を、近江屋へ連戻った事は、すぐに頷かれよう。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
掛稲に嫁菜の花、大根畑に霜の濡色も暖い。
— 泉鏡花 『怨霊借用』 青空文庫