靉
靉
名詞
標準
文例 · 用例
「国の光の、悠遠靉靆たる事に確信を持とうやないか。
— 太宰治 『惜別』 青空文庫
敵は靉河右岸に沿い九連城以北に工事を継続しつつあり、二十八日も時々砲撃しつつあり、二十六日|九里島対岸においてたおれたる敵の馬匹九十五頭、ほかに生馬六頭を得たり――「どうです、鴨緑江大捷の前触れだ、うれしかったねえ、あの時分は。
— 国木田独歩 『号外』 青空文庫
」 と高坂はやや気色ばんだが、悚然と肌寒くなって、思わず口の裡で、慧雲含潤 電光晃耀 雷声遠震 令衆悦予日光掩蔽 地上清涼 靉靆垂布 如可承攬 二「否、山さえお暴しなさいませねば、誰方がおいでなさいましても、大事ないそうでございます。
— 泉鏡花 『薬草取』 青空文庫
時に蒼空の澄渡った、」 と心激しくみひらけば、大なる瞳、屹と仰ぎ、「秋の雲、靉靆と、あの鵄たちまち孔雀となって、その翼に召したりとも思うお姿、さながら夢枕にお立ちあるように思出しましたは、貴女、令嬢様、貴女の事じゃ。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
かつて文壇の梁山泊と称えられた硯友社、その星座の各員が陣を構え、塞頭高らかに、我楽多文庫の旗を飜した、編輯所があって、心織筆耕の花を咲かせ、綾なす霞を靉靆かせた。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
たてに、斜に、上に、下に、散り、飛び、煽ち、舞い、漂い、乱るる、雪の中に不忍の池なる天女の楼台は、絳碧の幻を、梁の虹に鏤め、桜柳の面影は、靉靆たる瓔珞を白妙の中空に吹靡く。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
時に、真先に、一朶の桜が靉靆として、霞の中に朦朧たる光を放つて、山懐に靡くのが、翌方の明星見るやう、巌陰を出た目に颯と映つた。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
彼はこの横町に入り、トンネルを抜け横町が尽きて、やや広い通りに折れ曲るまでの間は自分の数奇の生立ちや、燃え盛る野心や、ままならぬ浮世や、癪に触る現在の境遇をしばし忘れて、靉靆とした気持になれた。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫