海潮
かいちょう
名詞
標準
文例 · 用例
あはれ、妙音海潮音の海の色もこゝに澄み、ふりあふぐ山懐に、一叢しげれるみどりの草の、蛍の光も宿すべく、濡色見えて暗きなかに、山の端分くる月かとばかり、大輪の百合唯一つ真白きが、はつと揺らぎて薫りしは、此の寂さに拍手の、峰にや響き候ひけん。
— 泉鏡花 『逗子より』 青空文庫
口につけると塩気があるから、海潮がさすのであろう。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
「東北風を斜に受けながら、北流する海潮を乗り越えつつ、今や木下君の船は刻々馬来半島の島角に近づきつつあるのです。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
中継ぎに捩れて海潮音に酔うて、うつゝなき形に、三稜の弁の形のビスケットが八枚と八枚を積み重ねる。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
妙音観世音 梵音海潮音 観音の有難さ、それは潮の音のごとく大きくひたひたと押し寄せる。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
あらゆる防水の方便は盡されたが、微塵に打碎かれたる屹水下からは海潮瀧の如く迸入つて、其近傍には寄り附く事も出來ない。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
『未だ實見はしませんが、御覽の通り、海面から餘程高いあの屏風岩の尖頭にも、海草が打上げられた程ですから、秘密造船所の内部は無論海潮の浸入のために、大損害を蒙つた事でせう、それが何か憂ふ可き事の原因となるのですか。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
轉地、湯治、海水浴等は、其の土地状態、温泉成分、海潮刺激等が有效なるのみならず、新境の現前といふことが、直ちに人の外境に對する對抗應變の自然の作用を開始せしめて、そして其の爲に張る氣を致さしめ、其の張る氣の生ずると同時に疾病や疲憊をして吾が身心より去るを致さしむるのである。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫