沸
にえ
名詞
標準
文例 · 用例
家庭の趣味如何を問う前に、主人其の人の趣味如何を見よ、趣味なき人に趣味ある家庭を説くは、火のない釜に、湯の沸くを待つようなものだ、こう云うて了えば、家庭問題と云うものは、全く無意義に帰して終う訳だ。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
血も沸かば沸け、炎も燃へばもへよ」とて、微笑を含みて読みもてゆく、心は大滝にあたりて濁世の垢を流さんとせし、某の上人がためしにも同じく、恋人が涙の文字は幾筋の滝のほとばしりにも似て、気や失なはん、心弱き女子ならば。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
湯殿でまだ沸き切らぬ湯をチヤブチヤブさせて遊んでゐる四人の小さな子供等こそは、実は一番喧しかつたのだが、長男に就いての一件の起こつてる時なので、他の四人の子供は何だか可愛い気がして、何時ものやうにとても「やめろ!
— 中原中也 『医者と赤ン坊』 青空文庫
早速、焚火にかかって、徒渉に濡れた脚絆を乾すやら、大鍋を吊して湯を沸かしたりする。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
が、ふいてもふいても、ふき切れない程の、涙が、腹の底から沸きだした。
— 葉山嘉樹 『遺言文学』 青空文庫
うちに下宿してる人たちでも、二三ヶ月すると、きっと肥って来るんですからね」「そう言ってましたよ、新屋でも、湯に沸かして入ると、リューマチに利くとか、とも言ってましたよ。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
ホースの尖端からは、沸騰点に近い熱湯がほとばしり出たが、それがデッキを五尺流れるうちには凍るのであった。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
さっき私がお縁側に立って、渦を巻きつつ吹かれて行く霧雨を眺めながら、あなたのお気持の事を考えていましたら、「ミルクを沸したから、いらっしゃい」 とお母さまが食堂のほうからお呼びになりました。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫