抉
抉
名詞
標準
文例 · 用例
内臟が抉出されてしまつて見ると、見學の人々は死體に對して本能的に感ずる一種の遠慮も、今朝の解剖に限つて存在する死體と執刀者との異常な關係なども、忘れてしまつて、學術的の興味に釣り込まれた。
— 有島武郎 『實驗室』 青空文庫
彼れはとう/\助手に指圖して腦の抉出に取りかゝつた。
— 有島武郎 『實驗室』 青空文庫
まざ/\と何事も明らさまな晝の光の下で、最愛のものゝ腹を割き頭を抉る……さうする事が自分の事業に對して一番忠實な處置であるのを信ぜねばならぬ彼れの世界はすぐその背後に廣がつてゐるのだ。
— 有島武郎 『實驗室』 青空文庫
三度目に、○、円いものを書いて、線の端がまとまる時、颯と地を払って空へ抉るような風が吹くと、谷底の灯の影がすっきり冴えて、鮮かに薄紅梅。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
」「いや、御深切は難有いが、薬罐の底へ消炭で、湧くあとから醒める処へ、氷で咽喉を抉られそうな、あのピイピイを聞かされちゃ、身体にひびっ裂がはいりそうだ。
— 泉鏡花 『歌行燈』 青空文庫
が、ただ先哲、孫呉空は、※螟虫と変じて、夫人の腹中に飛び込んで、痛快にその臓腑を抉るのである。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
その中の棚に斜っかけに乗せてあった経机ではない小机の、脚を抉って満月を透したはいいが、雲のかかったように虫蝕のあとのある、塗ったか、古びか、真黒な、引出しのないのに目を着けると……「有った、有った。
— 泉鏡花 『縁結び』 青空文庫
何処か、しゆつ/\と風が通る……十七「うら悲しい、心細い、可厭な声で、『お客様あゝ、』『奥様、』と呼ぶのが、山颪の風に響いて、耳へカーンと谺を返してズヽンと脳を抉る。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫