戒師
かいし
名詞
標準
文例 · 用例
さうして故右大臣さま御在世中は、ただの一度も京へおいでになられた事もなく、しんから鎌倉のお人になり切つて居られて、右大臣さまがあのやうな御最期なされたその翌日、荘厳房律師行勇さまの御戒師にて、ほとんど御家人のどなたよりもさきに御剃髪なさいました。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
廿一日、壬戌、和田平太胤長の女子、父の遠向を悲しむの余、此間病悩、頗る其恃少し、而るに新兵衛尉朝盛、其聞甚だ胤長に相似たり、仍つて父帰来の由を称して訪ひ到る、少生聊か擡頭して一瞬之を見、遂に閉眼すと云々、同夜火葬す、母則ち素懐を遂ぐ、西谷の和泉阿闍梨戒師たりと云々。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
戒師は誰であったか、何の書にも見えぬが、保胤ほどの善信の人に取っては、道の傍の杉の樹でも、田の畦の立杭でも、戒師たるに足るであろうから、誰でも宜かったのである。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
かかる狂気じみたところのある僧であったから、三条の大きさいの宮の尼にならせ給わんとして、増賀を戒師とせんとて召させたまいたる時、途轍も無き乎、と麁語を訳しているが、これも髣髴たるに至らず、訳して真を失っている。
— 幸田露伴 『連環記』 青空文庫
延暦寺の座主のほかに戒師を勤める僧が三人参っていて、法服に召し替えられる時、この世と絶縁をあそばされる儀式の時、それは皆悲しいきわみのことであった。
— 若菜(上) 『源氏物語』 青空文庫
戒師が完全に仏の戒めを守る誓いを、仏前で尊い言葉で述べる時に、院は体面もお忘れになり、夫人に寄り添って涙を拭いつつ夫人とともに仏を念じておいでになったのを見ると、聡明な貴人も御愛妻の病に仏へおすがりになる心は凡人に変わらないことがわかった。
— 若菜(下) 『源氏物語』 青空文庫
父の時国が云うのに、 お前が孕める処定めてこれは男の子であって一朝の戒師となる程の者に相違ないと。
— 中里介山 『法然行伝』 青空文庫
その時の院主僧都円長も最初のわしの師範であった美作の観覚得業も弟子になり皆自分の師範であった人が源空を戒師として弟子となった中にも、その時代の学者という学者は大抵慈眼房が戒を授けた弟子であるのに、その慈眼房が却ってこの法然の弟子となられたのは不思議のことである」と云って様々に語り聞かせたことがある。
— 中里介山 『法然行伝』 青空文庫