落ち掛かる
おちかかる
動詞
標準
文例 · 用例
そして秋の落ちかかる日の光で、人々は石碑の文字を讀むであらう。
— 萩原朔太郎 『芥川龍之介の死』 青空文庫
カルメンの中の独唱でも、管弦楽の進行の波頭が指揮者のふりかざした両腕から落ちかかるように独奏者のクローズアップに推移して同時にその歌を呼出すといったような呼吸の面白さは、実地では却って容易に味わわれないものである。
— 寺田寅彦 『映画雑感(5)』 青空文庫
が、ぱらぱらと落ちかかる巌膚の清水より、私たちは冷汗になった。
— 泉鏡花 『半島一奇抄』 青空文庫
」 その唇が、眉とともに歪んだと思うと、はらりと薫って、胸に冷り、円髷の手巾の落ちかかる、一重だけは隔てたが、お町の両の手が、咄嗟に外套の袖をしごくばかりに引掴んで、肩と袖で取縋った。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫
やや左手の眼の前に落ちかかる日輪は爛れたような日中のごみを風に吹き払われ、ただ肉桃色の盆のように空虚に丸い。
— 岡本かの子 『渾沌未分』 青空文庫
」十四「この水が、路端の芋大根の畑を隔てた、線路の下を抜ける処は、物凄い渦を巻いて、下田圃へ落ちかかる……線路の上には、ばらばらと人立がして、明い雲の下に、海の方へ後向に、一筆画の墨絵で突立つ。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
りんりんすりりん……りんりんすりりん……いまし、また水路のはてに、落ちかかる弦月あかく、そこここのくらみの奥に寝おびれて倦めるものごゑ。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫
嗚呼今か畏怖の極み、轡虫は調子はづれに噪めきつつ、はたと息絶え、落ちかかる黄金の弦心臓の喘さながらまた黒き柩にしづむ。
— 北原白秋 『第二邪宗門』 青空文庫