薬罎
くすり罎
名詞
標準
文例 · 用例
富岡老人は床に就いていてその枕許に薬罎が置いてある。
— 国木田独歩 『富岡先生』 青空文庫
倉蔵は手に薬罎を持ていた。
— 国木田独歩 『富岡先生』 青空文庫
鐘は鳴る……銀色の教会の鐘……硝子※のなかには薄色の青き眼がねをかけたる女、かりそめのなやみにほつれたる髪かきあげて、薬罎載せたる円卓のはしに肱つきながら金字見ゆるダンヌンチオの稗史を閉し、静かなる杏仁水のにほひにしみじみときき惚れてあり。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
しかし、そこにはピロカルピンの薬罎はあっても、それにはどこぞと云って、手を付けたらしい形跡はなかった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
同氏は薬罎を手に死しいたるより、自殺の疑いを生ぜしが、罎中の水薬は分析の結果、アルコオル類と判明したるよし。
— 芥川龍之介 『馬の脚』 青空文庫
枕元には薬罎や検温器と一しょに、小さな朝顔の鉢があって、しおらしい瑠璃色の花が咲いていますから、大方まだ朝の内なのでしょう。
— 芥川龍之介 『妖婆』 青空文庫
彼はそれらの余震になおも怯かされながら、しかし次第に、露台のまわりでうるさいくらい囀りだした小鳥たちの口真似をしてみたり、裏の山から腕いっぱい花を抱えて帰ってくる看護婦に分けて貰って薬罎にさした竜胆や鈴蘭などの小さな花の香りをかぎながら、彼は生き生きとした呼吸をし出した。
— 堀辰雄 『恢復期』 青空文庫
先刻藥罎を持つてはひつて來た清治の足袋から、親指の先が赤く覘いてゐた……あゝ、あゝ糞!
— 水野仙子 『四十餘日』 青空文庫