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引倒

いんとう
名詞
1
標準
文例 · 用例
峠の原で、たぶさを取って引倒して、覚えがあろうと、ずるずると引摺られて、積った雪が摺れる枝の、さいかちに手足が裂けて、あの、実の真赤なのを見た時は、針の山に追上げられる雪の峠の亡者か、と思ったんですがね。
泉鏡花 第二菎蒻本 青空文庫
ものいう間もなし、お誓を引倒して、危難を避けさせようとして、且つ及ばなかったのである。
泉鏡花 神鷺之巻 青空文庫
とろ/\と睡つて覚めれば、犬が来てぺろ/\と嘗めて居る……胴中を蛇が巻く、今穴を出たらしい家守が来て鼻の上を縦にのたくる……やがては作者の身躰を襲ふて、手をゆすぶる、襟頸を取つて引倒す、何者か知れずキチ/\と啼いて脇の下をこそぐり掛ける。
泉鏡太郎 神鑿 青空文庫
雛妓は、どうしてもうんと言わない逸作に向って、首筋の中へ手を突込んだり、横に引倒しかけたりする。
岡本かの子 雛妓 青空文庫
古木の樣な醜き腕を延して、鐵車の檻を引握み、力任せに車を引倒さんとするのである。
押川春浪 海島冐檢奇譚 海底軍艦 青空文庫
」 声に応じて牛頭馬頭は光子を仰様に引倒し、一人が両手、一人が両足、取って押えて動かさず。
泉鏡花 貧民倶楽部 青空文庫
」 と赫と成ると、躍上つて、黒髮を引掴むと、雪なす膚を泥の上へ引倒して、ずる/\と内へ引込む。
泉鏡太郎 一席話 青空文庫
健康な人々の中に許り閉ぢこもつてゐるといふことは危険なことだ、彼等はその健康をもつて、ぐん/″\不合理をも、押倒し、引倒し、藪原の材木を曳く壮健な馬のやうに、人生を突き進む、これに反して、可憐で繊細な病人達は、絶えず人生の姿に脅へた。
小説 小熊秀雄全集−15− 青空文庫