強心
きょうしん
名詞
標準
文例 · 用例
驚いて看護婦が強心剤のアンプルを切って、消毒もせずに一代の胸に突き刺そうとしたが、肉が固くてはいらなかった。
— 織田作之助 『競馬』 青空文庫
そうしてアルコールと、ニコチンと、阿片と、消化剤と、強心剤と、催眠薬と、媚薬と、貞操消毒剤と、毒薬の使い方を教えて、そんなもののゴチャゴチャが生み出す不自然の倒錯美をホントウの人類文化と思い込ませた。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
平生は塾務を大切にして一生懸命に勉強もすれば心配もすれども、本当に私の心事の真面目を申せば、この勉強心配は浮世の戯れ、仮りの相ですから、勉めながらも誠に安気です。
— 福翁自伝 『福翁自伝』 青空文庫
机博士は、戸倉老人の腕に、強心剤の注射を終えると、自分の指先をアルコールのついた脱脂綿で拭って、それからぎゅッとくびを延ばして背のびした。
— 海野十三 『少年探偵長』 青空文庫
ただ蔵経はかなり豊富だったので、彼は猛烈な勉強心を起こして、三七日の断食して誓願を立て、人並みすぐれて母思いの彼が訪ね来た母をも逢わずにかえし、あまりの精励のためについに血を吐いたほどであった。
— ――予言僧日蓮―― 『学生と先哲』 青空文庫
決して助からぬ運命を持った患者の死に際に、カンフルを始めその他の強心剤を与えて、弱りつつある心臓を無理に興奮せしめ、患者の苦痛を徒らに長びかすということは果して当を得た処置ということが出来るであろうか。
— 小酒井不木 『安死術』 青空文庫
寝台の上を七転八倒して、悲鳴をあげつつもがく有様を見ては、心を鬼にしなければ、強心剤を与えることは出来ません。
— 小酒井不木 『安死術』 青空文庫
私は、機械のように立ち上り、中央のガラス製のテーブルの上に置かれた、強心剤即ちカンフルの罎と注射器とを取り上げました。
— 小酒井不木 『安死術』 青空文庫