藻屑
もくず
名詞
標準
scraps of seaweed
文例 · 用例
穴が開いて、こわれごわれで、鼠の家の三階建のような、取附の三段の古棚の背のね、物置みたいな暗い中から、――藻屑を曳いたかと思う、汚い服装の、小さな婆さんがね、よぼよぼと出て来たんです。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
さてもその夜は暑かりしや、夢の恐怖に悶えしや、紅裏の絹の掻巻、鳩尾を辷り退いて、寝衣の衣紋崩れたる、雪の膚に蚊帳の色、残燈の灯に青く染まって、枕に乱れた鬢の毛も、寝汗にしとど濡れたれば、襟白粉も水の薫、身はただ、今しも藻屑の中を浮び出でたかの思がする。
— 泉鏡花 『悪獣篇』 青空文庫
續いて一人の美少年、何處より落ちたりけん、華嚴の瀧の底を拔けて、巖の缺と藻屑とともに、雲より落ちつと覺しきが、助けを呼ぶか諸手を上げて、眞俯向けに流れ來しが、あはよく巖に住まりて、一瀬造れる件の石に、はた其の桂の枝まつはりたるに、衣の裾を卷き込まれ、辛くも其の身をせき留めつ。
— 泉鏡花 『妙齡』 青空文庫
妾も、日出雄も、此儘海の藻屑と消えても、决して未練に助からうとは思ひませぬ。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
見渡す限り雲煙渺茫たる大空に漂蕩して、西も、東も定めなき今、何時大陸に達して、何時橄欖島に赴き得べしといふ目的もなければ、其内に豫定の廿五|日も去つたならば、櫻木大佐も終には覺悟を定めて、稀世の海底戰鬪艇と共に、海の藻屑と消えてしまう事であらう。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
春枝丈けは其後無事に皈つて來たものゝ、君の行衞は知れず、私が兼てより、有爲な帝國海軍々人に養成して、國に獻げんと心に樂しんで居つた日出雄は、君と共に、印度洋の藻屑と消えてしまつたと斷念した時には、實に泣くより辛かつたです。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
留守はただ磯吹く風に藻屑の匂いの、襷かけたる腕に染むが、浜百合の薫より、空燻より、女房には一際床しく、小児を抱いたり、頬摺したり、子守唄うとうたり、つづれさしたり、はりものしたり、松葉で乾物をあぶりもして、寂しく今日を送る習い。
— 泉鏡花 『海異記』 青空文庫
即ち二人の若者は勢よく着物を脱いで女達に渡し、それから海を清む可く、藻屑を浚ふ可く冷い海水の中に飛び込んだ。
— 木下杢太郎 『海郷風物記』 青空文庫
作例 · 標準
嵐が去った後の海岸には、大量の藻屑が打ち上げられていた。
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このまま船が沈めば、我々は海の藻屑となってしまうだろう。
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砂浜に溜まった藻屑の中に、小さな貝殻が混ざっているのを見つけた。
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