攀上
攀上
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文例 · 用例
そして谷底まで下りた人の多数はそのままに麓の平野を分けて行くだろうし、少数の人はそこからまた新しい上り坂に取りつきあるいはさらに失脚して再び攀上る見込のない深坑に落ちるのであろうが、そのような岐れ路がやはりほぼ四十余歳の厄年近辺に在るのではあるまいか。
— 寺田寅彦 『厄年と etc.』 青空文庫
三ツばかり谷へ下りては攀上り、下りては攀上りした時は、ちと心細くなった。
— 泉鏡花 『朱日記』 青空文庫
…… 桃も桜も、真紅な椿も、濃い霞に包まれた、朧も暗いほどの土塀の一処に、石垣を攀上るかと附着いて、……つつじ、藤にはまだ早い、――荒庭の中を覗いている――絣の筒袖を着た、頭の円い小柄な小僧の十余りなのがぽつんと見える。
— 泉鏡花 『絵本の春』 青空文庫
ト突出た廂に額を打たれ、忍返の釘に眼を刺され、赫と血とともに総身が熱く、たちまち、罪ある蛇になって、攀上る石段は、お七が火の見を駆上った思いがして、頭に映す太陽は、血の色して段に流れた。
— 泉鏡花 『売色鴨南蛮』 青空文庫
取縋る松の枝の、海を分けて、種々の波の調べの懸るのも、人が縋れば根が揺れて、攀上った喘ぎも留まぬに、汗を冷うする風が絶えぬ。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
窓へ、や、えんこらさ、と攀上った若いものがある。
— 泉鏡花 『革鞄の怪』 青空文庫
何しろ……胸さきの苦しさに、ほとんど前後を忘じたが、あとで注意すると、環海ビルジング――帯暗|白堊、五階建の、ちょうど、昇って三階目、空に聳えた滑かに巨大なる巌を、みしと切組んだようで、芬と湿りを帯びた階段を、その上へなお攀上ろうとする廊下であった。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
傘はぐる/\と段にかゝる、と苦もなく攀上るに不思議はない。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫