退口
のきくち
名詞
標準
文例 · 用例
――松村さん、木戸まで急用―― いけ年を仕った、学芸記者が馴れない軽口の逃口上で、帽子を引浚うと、すっとは出られぬ、ぎっしり詰合って飲んでいる、めいめいが席を開き、座を立って退口を譲って通した。
— 泉鏡花 『開扉一妖帖』 青空文庫
渋川はその祖先なにがしが三方ガ原退口の合戦に花々しい討死を遂げたという名家で、当代の主人伊織助は従弟同士の播磨と殆ど同年配の若者であるが、その後見をする母の真弓は、天晴れ渋川の家風に養われた逞ましい気性の女であった。
— 岡本綺堂 『番町皿屋敷』 青空文庫
柿崎は首尾よく退口を取ったであろうか。
— 吉川英治 『上杉謙信』 青空文庫
謙信の憂えていたのも、退口退口と頻りにつぶやいたのも、その点に気がかりがあったにちがいない。
— 吉川英治 『上杉謙信』 青空文庫
よい気になって長陣していたら、敵は、退口を断って、所々の味方とつなぎを取り、われらを重囲に堕してから、本相をあらわして戦い出したにちがいない。
— 第二分冊 『新書太閤記』 青空文庫
けれど十万の大退口を、どうとるか、由来、前進はやすく、後退は難しい、と兵家も訓めている。
— 第三分冊 『新書太閤記』 青空文庫
もっとも悲壮だったのは、自分から殿軍をひきうけて、味方の大軍が、退口を取った後も、わずかな手勢と共に、金ヶ崎の孤塁に残った藤吉郎であった。
— 第三分冊 『新書太閤記』 青空文庫
そして、信長が朽木越えした夜の翌朝から、白昼にかけて、柴田勝家、坂井右近、蜂屋兵庫、池田勝三郎などの面々、九万の味方は、徐々に退口を落ちて行った。
— 第三分冊 『新書太閤記』 青空文庫