殻色
からいろ
名詞
標準
文例 · 用例
さてベランダの上にだが見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかアこれは今日昼落とした文子さんのだ明日はこれを届けてやらうポケットに入れたが気にかゝる、月は※荷を食ひ過ぎてゐる灌木がその個性を砥いでゐる姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
霧がすっきりと霽れて、前には笠ヶ岳の大尾根が、赭っちゃけた紅殻色の膚をあらわし、小笠から大笠へと兀々とした瘤が、その肩へ隆起している、遠くの空に、加賀の白山は、いつもの冷たい藍色に冴えて、雪の縞が、むしろ植物性の白い色をおもわせる。
— 小島烏水 『谷より峰へ峰より谷へ』 青空文庫
向う岸は倉庫と倉庫の間の空地に、紅殻色で塗った柵の中に小さい稲荷と鳥居が見え、子供が石蹴りしている。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
右舷に見える懸崖がまっかな紅殻色をしていて、それが強い緑の樹木と対照してあざやかに美しい。
— 寺田寅彦 『旅日記から(明治四十二年)』 青空文庫
道路はシンガポールの紅殻色と違ってまっ白な花崗砂である。
— 寺田寅彦 『旅日記から(明治四十二年)』 青空文庫
椰子の木の森の中を縫う紅殻色の大道に馬車を走らせた時の名状のできない心持ちだけは今でもありあり胸に浮かんで来るが、細かい記憶は夢のように薄れて、ただ緑と赭の地色の上に染め出された更紗模様のように混雑してしまっている。
— 寺田寅彦 『病室の花』 青空文庫
ぱっと塔のねもとからまっかな雲が八方にほとばしりわき上がったと思うと、塔の十二階は三四片に折れ曲がった折れ線になり、次の瞬間には粉々にもみ砕かれたようになって、そうして目に見えぬ漏斗から紅殻色の灰でも落とすようにずるずると直下に堆積した。
— 寺田寅彦 『LIBER STUDIORUM』 青空文庫
店の紅殻色の壁に天狗の面が暴戻な赤鼻を街上に突き出したところは、たしかに気の弱い文学少年を圧迫するものであった。
— 寺田寅彦 『銀座アルプス』 青空文庫