遠里
とおさと
名詞
標準
文例 · 用例
うしろは、遠里の淡い靄を曳いた、なだらかな山なんです。
— 泉鏡太郎 『人魚の祠』 青空文庫
また振返って見れば、山の裾と中空との間に挟まって、宙に描かれた遠里の果なる海の上に、落ち行く日の紅のかがみに映って、そこに蟠った雲の峰は、海月が白く浮べる風情。
— 泉鏡花 『星女郎』 青空文庫
遠里小野の野越に、鳩の子古巣にかへるごとく、わが魂の伸羽こそ、いづくをゆくへと辨へ知れ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
白すみれ忘れがたみよ、津の國の遠里小野の白すみれ、人待ちなれし木のもとに、摘みしむかしの香ににほふ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
白すみれ一忘れがたみよ、津の國の遠里小野の白すみれ、人待ちなれし木のもとに、摘みしむかしの香ににほふ。
— 薄田淳介 『白羊宮』 青空文庫
日はやゝに傾きて、遠里に靄はたち、中空の温もりに、草の香いや高き片岡、夢|薫り、現は匂ふ今、眠眼の牧羊神、笙を吹きやみぬ。
— 上田敏 『牧羊神』 青空文庫
かきこもる木陰かすかにともす火のうつるも涼し山のやり水山かげの滝の音きよし蜩の啼くこゑ聞けば秋ちかづきぬ蝉の音に夏こそ残れ山窓はにほひすずしき葛の初花播津国住の江の遠里小野にまかりし時。
— 與謝野禮嚴 『禮嚴法師歌集』 青空文庫
露おけば白く涼しな住の江の遠里小野の草な刈りそね妙心寺中の蟠桃院なる稻葉宙方の身まかりけるに。
— 與謝野禮嚴 『禮嚴法師歌集』 青空文庫