撒水
さっすい
名詞
標準
文例 · 用例
その一つに繻絆一枚で腰掛けて老人の読んでゐた新聞に、三十何年とか撒水車を挽いてゐるといふ男の笑つて汗を拭いてゐる写真が通りがかりに見えた。
— 中原中也 『夏の夜の話』 青空文庫
撒水孔のような耳環のあと。
— 吉行エイスケ 『新種族ノラ』 青空文庫
そこで区役所では撒水夫に雇ひました。
— 宮沢賢治 『革トランク』 青空文庫
撒水車がゆつくりと登つてきました。
— ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 『巴里の手紙』 青空文庫
日本橋に手の届く、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎の立つ長閑さに、彩色した貝は一枚々々、甘い蜂、香しき蝶になって舞いそうなのに、ブンブンと唸るは虻よ、口々に喧しい。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
油うく線路の正面、鉄重き橋の構に雲ひとつまろがりいでてくらくらとかがやく真昼、汗ながし、車|曳きつつ匍匐ふがごと撒水夫きたる。
— 北原白秋 『邪宗門』 青空文庫
わかい葉柳の並木路、撒水した煉瓦道、そのなかの小さな人口花壇、(疲れた瞳の避難所)その方二|尺のかなしい区劃に、夏がきて花が咲いた、小さい細い石竹と釣鐘艸。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫
よひやみの、よひやみの、いづこにか、赤い花火があがるよの、音はすれども、そのゆめは見えぬこころにくづるる……ほのかにも紫陽花のはな咲けば、新にかけし撒水の香のうつりゆくしたたり、さて、消えやらぬ間の片恋。
— 北原白秋 『東京景物詩及其他』 青空文庫