不決定
ふけってい
名詞
標準
pending
文例 · 用例
その結果としておもしろいことには、われわれが従来捨てて顧みなかった上記の種類の不決定な事がらに対して、もはやいつまでもそうそう無関心ではいられなくなって来たと私には思われる。
— 寺田寅彦 『物理学圏外の物理的現象』 青空文庫
こういうふうに考えて来るといわゆる「創作」と随筆との区別は、他の多くの「分類」の場合と同じく、漸移的不決定的なものである。
— 寺田寅彦 『科学と文学』 青空文庫
時を逆行させることによって起こるもう一つの不思議は、決定的の世界が不決定になることである。
— 寺田寅彦 『映画の世界像』 青空文庫
自然発生的に日本プロレタリア文学運動の先行的任務を負った「文戦」の作家たちは、ロマンチシズム、未組織な個人的センチメンタリズム、政治的行動理論の不決定さで右や左へ揺れながら、それでもある水準に達した技術で、黎明期のプロレタリア文学活動に重大な役割をはたした。
— ――「ナップ」第三回大会にふれて―― 『文芸時評』 青空文庫
女性にとって結婚とそれにひきつづいての家庭生活とは一つのものでありながらまた二つのものであって、ある人と結婚してもよいという気持と、在来の家庭の形態の中で女性が強いられて行かなければならないものをそのまま承引しかねる気持とは、若い向上欲のある女性の感情を苦しい分裂と不決定に置きがちである。
— 宮本百合子 『結婚論の性格』 青空文庫
医学者に対しては、病死と変死との孰れであるかという質問が発せられましたが、その答えはどれも不決定的なものであり、解剖を待つより外に死因を決定する手段はあるまいとのことでした。
— 海野十三 『赤耀館事件の真相』 青空文庫
生ける問いの構造は、むしろかかる決定せられたる不決定、この放たれんとする弓絃のおののきのごとき、その一念の極致にあるともいえよう。
— ――文学のメカニズム―― 『探偵小説の芸術性』 青空文庫
幾代と兼子とが、既に決定したもののように先のことばかり考えてるのを見ると、彼は現在の不決定な状態に益々苛立った。
— 豊島与志雄 『子を奪う』 青空文庫