構い手
かまいて
名詞
標準
companion
文例 · 用例
構い手のない肺病娘のホツレ毛に引っかかって、見えるか見えないかにわななきふるえつつ、夢うつつのように紅い紅い血を吐き続けさせ、旧教会のステインドグラスに這い付いて、ありがたいお説教の余韻を薄曇らせ、聖書の黒い表紙の手ざわりにザラめいては、祈る者の悲しみをためらわせる。
— 夢野久作 『塵』 青空文庫
――遠くの方で、ドーンドーンと、御輿の太鼓の音が聞えては、誰もこちとらに構い手はねえよ。
— 泉鏡花 『山吹』 青空文庫
何でも直ぐの兄に当る二十七、八になる一人息子が、家|土蔵をなくするほどの道楽をした揚句、東京で一旗上げると言って飛び出した切り、行方を晦ましているそうで、年|老った両親は誰も構い手がないままに、喰うや喰わずの状態でウロウロしているそうです。
— 夢野久作 『少女地獄』 青空文庫
これはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのである。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
誰も構い手がねえから、まだ菰をかけてありますよ――先刻町役人立ち会いで調べてみると、胴巻から二十五両包が四つ飛出しやがった。
— 血潮と糠 『銭形平次捕物控』 青空文庫
「お店のある池之端仲町の同じ町内に、松さんというばかがいました」とおえいは続けた、「十七か八でしたが、口も満足にきけず、洟と涎をたらしたまま、いつも町内をぶらぶらしていて、子供たちのほかには誰も構い手がないんです、あたしその松さんのことに気がつきました」 ばかになれば身を売られずに済む。
— 氷の下の芽 『赤ひげ診療譚』 青空文庫
なあ、爺さん、血だらけで、虫の息で、誰も、かまいて無いのを――」「婆さん、ちがうがの。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫
勝信 (よみつづける)またこの世にいますこしすみたき、あらかなしや、いま死ぬかよなどとは、かまいてかまいておぼしめすな。
— 倉田百三 『出家とその弟子』 青空文庫
作例 · 標準
うちの猫は寂しがり屋で、誰かが構い手になってやらないと、すぐに机の上の物を落として注意を引こうとする。
共働きで日中の構い手がいないため、学校帰りの子供たちは地域の高齢者がボランティアを務める放課後教室で過ごしている。
「ねえ、次はこの絵本を読んで!」とせがむ孫の構い手を務めるのは、体力的にきついが何よりの楽しみでもある。
保護施設から引き取ったばかりの犬には、焦らずゆっくりと信頼関係を築いてくれる忍耐強い構い手が求められている。