寵妾
ちょうしょう
名詞
標準
文例 · 用例
自分の罪を――たとえ向うから挑まれたとはいえ、主人の寵妾と非道な恋をしたという、自分の致命的な罪を、意識している市九郎は、主人の振り上げた太刀を、必至な刑罰として、たとえその切先を避くるに努むるまでも、それに反抗する心持は、少しも持ってはいなかった。
— 菊池寛 『恩讐の彼方に』 青空文庫
お庭に立並んでいた寵妾お秀の方を初め五六人の腰元が固唾をのんで立ち竦んだ。
— 夢野久作 『名君忠之』 青空文庫
紅裏を取り、表は白綸子、紅梅、水仙の刺繍をした打ち掛けをまとったその下から、緋縮緬に白梅の刺繍をした裏紅絹の上着を着せ、浅黄縮緬に雨竜の刺繍の幅広高結びの帯を見せた、眼ざめるばかりに妖艶な、二十歳ばかりの女であって、主殿頭の無二の寵妾、それはお篠の方であった。
— 国枝史郎 『十二神貝十郎手柄話』 青空文庫
」「あくまで明しを立てぬとなら、殿の寵妾とて容赦はせぬ!
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
照近江から初代お鯉が桂公の寵妾となり、二代目お鯉が西園寺侯爵の寵愛となった。
— 長谷川時雨 『明治美人伝』 青空文庫
寵妾お鯉の家に大臣は隠れているといって、麻布の妾宅焼打ちを、宣伝するものがあった。
— 長谷川時雨 『一世お鯉』 青空文庫
庄屋の紅葉が『今夜の盆踊には領主の龍造寺殿が、忍び姿で見物に来られて、気に入つた娘が有つたら寵妾にせられるとやら。
— 江見水蔭 『硯友社と文士劇』 青空文庫
× 彩画をほどこした銀泥の襖、調度の物の絢爛さ、いま大奥の一間に囁き合っているのは、家綱の寵妾お通の方と、一人は久しく見えなかった姉の光子の御方だった。
— 吉川英治 『剣難女難』 青空文庫