正目
しょうめ
名詞
標準
文例 · 用例
此時主人は改めて大きくにッたりと笑って、其眼は客を正目に見ながら、「如何にも手広い渡海商いは、まことに心地よいことでござろう。
— 幸田露伴 『雪たたき』 青空文庫
泣かゆるに日は照り暑し湯気立てて蟶を今|釜に煮沸す照る砂に雷管のごと花落す朱欒一木が老いてお庭に棟瓦千石船の朱と碧は正目仰ぎて深き雑草鍋二つ汲水場に伏せて明らけき夏真昼なり我家なりにし白栄に蛇奔る裏堀は水紋の動き光とありつつ我が書斎たりし隠居家は、なほ遺れども、既に久しく鎖しぬ。
— 北原白秋 『夢殿』 青空文庫
あなせつなさの今宵や、野もせに靡くさびれの身に沁み入りては心弱に、別れし人のおもかげ、くづをれ泣きし身樣のそれさへ正目にながめられて、思ひ出いたき昔日の歎きよ、ふたたび浮び來ぬる。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
7ひねもす空の八衢に、すべる車の煌の輪の清きどよみを聞きながら、吹息する夜は神祕の氣、虹のごとくに花やぎて、展くや、ここに大天のさかえ溢るる藐姑の山、高き清きにあくがれて、「いであ」の國に遊ぶ子ぞ、正目にかかる常世べのかかる奇靈も仰ぎえて、生身さながら白金の御座にすがる醉あらむ。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫
」 叫びながら、釣瓶落しをまっこうに振りかざして、なおも主水正目ざしてとびこもうとする。
— 日光の巻 『丹下左膳』 青空文庫
』 河合は頤を下につけて正目に女を見て云つた。
— 與謝野晶子 『午後』 青空文庫
心ある者ならば、正目には仰ぎ見ることも畏しと感ぜられる筈であり、千余年の秘封を明治十七年に初めて開いたのがフェノロサという外国人であったという事であるが、これは外国人だからこそ敢て為し得たというべきである。
— 高村光太郎 『美の日本的源泉』 青空文庫
正目に見るのはこれがはじめてだが、話に聞いていた悪性女の感じはどこにもない。
— 久生十蘭 『鈴木主水』 青空文庫