檜物
ひもの
名詞
標準
文例 · 用例
曰く、清葉、曰く令夫人で可いものを、誰が詮索に及んだか、その住居なる檜物町に、磨込んだ格子戸に、門札打った本姓が(滝口。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
以前、仲之町の声妓で、お若と云った媚かしい中年増が、新川の酒問屋に旦那が出来たため色を売るのは酷い法度の、その頃の廓には居られない義理になって場所を替えた檜物町。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
それまで檜物町に差向いでいた芸者が、一所に着いて来ない意気じゃ、成程出来ていませんね。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
同じ、娑婆に、おなじ時刻に、同じ檜物町の土地に、ただ町を離れて、本郷の学校の門と、格子戸を隔てただけで住んでいる筈の清葉さえ、夢に見ても夢でさえ、遠出だったり、用達しだったり、病気だったりして逢えないんだものね。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
驚いて法師が、笠に手を掛け、振返ると、亀甲形に空を劃った都会を装う、鎧のごとき屋根を貫いて、檜物町の空に※と立つ、偉大なる彗星のごとき火の柱が上って、倒に迸る。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
唯見る、日本橋檜物町藤村の二十七疊の大廣間、黒檀の大卓のまはりに、淺葱絽の座蒲團を涼しく配らせて、一人第一番に莊重に控へて居る。
— 泉鏡太郎 『九九九會小記』 青空文庫
きょうは風が南に変って、珍らしく暖いと思っていると、酉の上刻に又|檜物町から出火した。
— 森鴎外 『護持院原の敵討』 青空文庫
女は日本橋檜物町の素人屋の二階を借りて棲んでゐる金貸しをしてゐる者の娘で神田の実業学校に通うてゐた。
— 田中貢太郎 『水郷異聞』 青空文庫