手薬煉
てぐすね
名詞
標準
文例 · 用例
この間に出刃打ちの弁護士は非常な苦心で、十分弁護の方法を考えておいて、いざ公判という日には、一番腕を揮って、ぜひとも出刃打ちを助けようと、手薬煉を引いているそうだから、これは裁判官もなかなか骨の折れる事件さ」 甲者は例の「なるほど」を言わずして、不平の色を作せり。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
独り宮のみは騒げる体も無くて、その清き眼色はさしもの金剛石と光を争はんやうに、用意深く、心様も幽く振舞へるを、崇拝者は益々|懽びて、我等の慕ひ参らする効はあるよ、偏にこの君を奉じて孤忠を全うし、美と富との勝負を唯一戦に決して、紳士の憎き面の皮を引剥かん、と手薬煉引いて待ちかけたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
それで、二人の撞くところは電公と蚊帳が捫択してゐるやうなものだ」風「ええ、自分がどれほど撞けるのだ」蒲「さう、多度も行かんが、天狗の風早に二十遣るのさ」 二人は劣らじと諍ひし末、直に一番の勝負をいざいざと手薬煉引きかくるを、遊佐は引分けて、「それは飲んでからに為やう。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
……大坂城代も町奉行も我ら眷族の者どもを一網打尽に捕らえようとてぐすね引いて待っている由、危険千万でござるゆえ、大坂上陸はお止めなされとな。
— 国枝史郎 『加利福尼亜の宝島』 青空文庫
八王子市は、その方角で、いちばん大きな町ですから、警察も新聞社も、てぐすねひいて待ちかまえていたのに、ついに、円盤はあらわれなかったというのです。
— 江戸川乱歩 『宇宙怪人』 青空文庫
下には、十数人の人たちが、てぐすねひいて待ちかまえています。
— 江戸川乱歩 『仮面の恐怖王』 青空文庫
唐突ですから、宵に手ぐすねを引いた連中も、はあ、と引呼吸に魂を引攫れた拍子に――飛びました。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
もし昭青年がちょっとでも言葉に詰まったら、いたく打ちのめし、引き括って女と一緒に寺門|監督の上司へ突出そうと、手ぐすね引いて睨めつけています。
— 岡本かの子 『鯉魚』 青空文庫