軒庇
のきびさし
名詞
標準
文例 · 用例
雪のかゝらない軒庇から負傷者が乗りこむのを見ていた看護長は、「何だ?
— 黒島傳治 『氷河』 青空文庫
さすが信州第一の仏教の地、古代を眼前に見るやうな小都会、奇異な北国風の屋造、板葺の屋根、または冬期の雪除として使用する特別の軒庇から、ところ/″\に高く顕れた寺院と樹木の梢まで――すべて旧めかしい町の光景が香の烟の中に包まれて見える。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
私たちの立ってるすぐ上の軒庇から黒い鳥が二羽三羽と吹雪の中を飛び下りて来てはまた飛び上って行く。
— 野上豊一郎 『吹雪のユンクフラウ』 青空文庫
途中自動車の中から、昔のままの軒庇しを出した家並みの通りの中に、何年にも同じ古びさに見える自分らの生れた家がちらと眺められて、自分は気づかないような風をしていたがちょっと悲しい気持を誘われたりした。
— 葛西善蔵 『父の葬式』 青空文庫
まもなく軒庇までつきそうであった。
— 山本周五郎 『暴風雨の中』 青空文庫
水が軒庇についたのだろう、たぷたぷと重く、下から庇板を打つ音が聞えだした。
— 山本周五郎 『暴風雨の中』 青空文庫
誰について学んだかということは伝わっていないが、その術の精妙なことは驚異に価したらしい、ことに身体動作の軽捷さは神業のごとくで、慶安四年三月二十五日、将軍|家光の上覧試合に阿部道世入道と立合った時などは、跳躍するたびにその衣服の裾が軒庇を払ったと伝えられている、蝙也の号もその辺に由来するらしい。
— 山本周五郎 『松林蝙也』 青空文庫