陰魔
おんま
名詞
標準
demon of aggregates (who causes many kinds of suffering)
文例 · 用例
さすがに醉ひ伏したる上人、衣につたふ雫に驚かされてや、篠つくごとき雨にぬれて起き上りたまひしが、右へ行かんとしては左へよろめき、左へ行かんとしては右へよろめき、すゞしくたふとしと見ゆるおんまなこ酒に濁りて、顏は醉ふて朱の如く、姿は亂れて狂ふがごとく、仆れんとして前に石あり、のめらんとして後に石あり。
— 島崎藤村 『山家ものがたり』 青空文庫
若宮祭りは若宮の神官が行ふのであるが、所謂「おんまつり」の行列は、五師の坊が行ふものというてよいのである。
— 折口信夫 『春日若宮御祭の研究』 青空文庫
……ゆんべ吹いた風は大津へ聞えて、大津はおんま(御馬か)つちのこは槍持ち、能う槍持つて。
— 折口信夫 『三郷巷談』 青空文庫
まるで紋也様が福の神で、札の束でもくわえて来るように、追っかけおんまわしひっ捉えようとしている。
— 国枝史郎 『娘煙術師』 青空文庫
英国の父から送ってくれた、美くしい飾珠の一杯ついた馬具をつけた彼が、小さい銀の鈴を鳴らしながら「おんま、ハイチハイチ」と這って行く。
— 宮本百合子 『一つの芽生』 青空文庫
世間のうわさでは、太こうでんかゞ御りんじゅうのみぎりにはあのお方をおんまくらべにおよびなされて、秀頼のことをたのんだぞよと、くれ/″\も御ゆいごんあそばされたと申すではござりませぬか。
— 谷崎潤一郎 『盲目物語』 青空文庫
「これ竹童、伊那丸君のおんまえ、つッ立っていてはならぬ、すわれすわれ」「いや、そう叱らぬがよい、鞍馬の奥でそだった者じゃ、その天真爛漫がかえって美しい。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫
はッと、おんまえにかしこまりますと、すなわち、このご状筥――」 肩にまわして胸にむすんだ、紅い丸紐の房をいじりながら、「――この御書をとりいそいで、甲州躑躅ヶ|崎の大久保石見守の手もとへまでとどけよ、とのおおせにござります。
— 吉川英治 『神州天馬侠』 青空文庫