棚下
たなした
名詞
標準
文例 · 用例
紋床は構わず棚下、「活きるか死ぬかというこれが情婦だったって、それじゃ愛想を尽しましょう、おまけにこれが行く先は、どこだって目上の親方ばかりでさ、大概神妙にしていたって、得て難癖が附こうてえ処でその身持じゃあ、三日と置く気遣はありやしません。
— 泉鏡花 『三枚続』 青空文庫
」 と正面よりお顔を凝視めて、我良苦多の棚下。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
それに、変に思はれたのは、妻が母のことで不平を云ふ時Oの棚下ろしもしさうなものなのに、それはやらないことだ。
— 二葉亭四迷 『嫉妬する夫の手記』 青空文庫
この狸は家の者の見ぬ間には、下手な字で障子襖に皆の棚下しをする。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
久米氏は――美術批評家に対して、顔の棚下しをして甚だ相済まない次第だが――人も知つてゐる通り口が大きく頤が突つ張つて、俗にいふえらの出た顔で、あんぐり口を開いたら、ラルウスの仏語辞典でも詰め込めさうな大きさである。
— 大正十一(一九二二)年 『茶話』 青空文庫
ところが或時、例の連中、(其の頃漸く親しくなりかけた許りだつたが、)が或處に落ち合つて、色々の話の末に、社中の誰彼の棚下しを始めた。
— 石川啄木 『我等の一團と彼』 青空文庫
いずくにかわがふるさとはなきものか葡萄の棚下に寄りそいて寄りそいて一房の青き実をはみ君と語ろう ひねもすひねもす……。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫
寄席の高座にのぼる江戸風軽口の話口をきくと、大概みんな自分の顔の棚下しや、出来そくなった生れつきのこきおろしをやる。
— 長谷川時雨 『朝散太夫の末裔』 青空文庫