迷い出る
まよいでる
動詞
標準
文例 · 用例
父という人は三十三ヵ所の観音|詣でを思い立って、一人で遠い旅へ迷い出ると、陸奥松島の掃部という男と道中で路連れになった。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
いっそ夜風に吹かれたらよいかも知れないと思って、私はよほど腫れて来たらしい右の頬をおさえながら、どこを的ともなしに門外まで迷い出ると、月の色はますますあかるく、門前の小川の水はきらきらと輝いて、堤の柳の葉は霜をおびたように白く光っていた。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
いっそ夜風に吹かれたら好いかも知れないと思って、私はよほど腫れて来たらしい右の頬をおさえながら、どこを的ともなしに門外まで迷い出ると、月の色はますます明るく、門前の小川の水はきらきらと輝いて、堤の柳の葉は霜をおびたように白く光っていた。
— 岡本綺堂 『はなしの話』 青空文庫
群れよる鮪の大群の中へ僅かな鮒がひらひらさ迷い出るように、押し潰されそうな幻覚を感じ、岩を噛む波の色までお伽噺の中の人魚を洗う波かと見える。
— 横光利一 『旅愁』 青空文庫
道理で、辻斬りが流行るというのにこのごろはなお何かに呼ばれるように左膳は夜ごとの闇黒に迷い出る――もう一口の刀さがしに!
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
友木夫妻が三日ばかり食物らしいものを口にせず、年の暮を控えて、一銭の金も尽き、路頭に迷い出る他に道のなくなったのは、玉島の為だと云っても好いのだった。
— 甲賀三郎 『罠に掛った人』 青空文庫
遠い地平線の彼方へまでさ迷い出る魂が、そのままの憧れを懐いて胸の中に戻ってくる。
— 豊島与志雄 『秋の気魄』 青空文庫
純文学などが文芸の垣をのり越えて評論や政論の世界にさ迷い出る時、この症状は誰の目にもあまるだろう。
— 戸坂潤 『認識論とは何か』 青空文庫