思い顔
おもいがお
名詞
標準
文例 · 用例
こうした最高の方を舅君とし、母宮として、たいせつにお扱われする名誉もどうしたものか薫の心には特別うれしいとは思われずに、今もともすれば物思い顔をしていて、宇治の御堂の造営を大事に考えて急がせていた。
— 宿り木 『源氏物語』 青空文庫
前へ一歩、後へ一歩、躊躇ながら二階を降りて、ふいと縁を廻わッて見れば、部屋にとばかり思ッていたお勢が入口に柱に靠着れて、空を向上げて物思い顔……はッと思ッて、文三立ち止まッた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
それをその娘は、耻かしそうに俯向きは俯向きながら、己れも仕合と思い顔で高慢は自ら小鼻に現われている。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
容易ならぬ時代を思い顔な子息の勝重をかたわらにすわらせて、客と一緒に大きな一閑張りの卓をかこんだところは、それでも同じ血を分けた親子かと思われるほどだ。
— 第二部上 『夜明け前』 青空文庫
父の回復を祷ろうとして裏の稲荷へ願掛けした母お民は露にぬれたお百度の道を踏むに余念もなく、畠へ通う下男の佐吉も病める旧主人を思い顔である。
— 第二部下 『夜明け前』 青空文庫
野菜畠には戦地にある子を思い顔な老人が耕していた。
— 島崎藤村 『新生』 青空文庫
すると、月は物思い顔にじっと自分を見ていたが、その儘黒い雲のうしろに隠れてしまったことを、海豹は思い出したのであります。
— 小川未明 『月と海豹』 青空文庫
すると、月は、物思い顔に、じっと自分を見ていたが、そのまま、黒い雲のうしろに隠れてしまったことをあざらしは思い出したのであります。
— 小川未明 『月とあざらし』 青空文庫