覚えさす
おぼえさす
動詞
標準
文例 · 用例
紫夫人は顔をあらわに見せて話すようなことは今までこの人となかったのであるが、今度はよく睦まじく話して、過去においては長く僭越な競争者であると見ていた人に好意を持ちうるようになり、若宮を愛する気持ちの交流があたたかい友情までも覚えさすことになった。
— 若菜(上) 『源氏物語』 青空文庫
「頭脳の悪いものは、強いて学問などさして苦しますより、いっそ商売を覚えさすか職人にでもした方が早道だそうでね。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫
鏡子は京都者の軽い意味で云ふ横着と云ふ言葉が、東京者に悪い感じを与へるのと、東京の人が軽い意でちよくちよく嘘と云ふ言葉を遣ふのが京の人に不快を覚えさすのとは、一寸説明した位で分らない事だから、こんな時には黙つて居るより仕方がないと思つて居る。
— 與謝野晶子 『帰つてから』 青空文庫
女と云ふものは唯肉付がよく皮膚が滑らかで綺麗で、男がその横へ行くと少しの間だけ快感を覚えさすものだと定義を下すと、そんな快感が五年も十年も続くであらうかと心配する。
— 死線を越えて 『死線を越えて』 青空文庫
この惰気からわく霧のような心中の敵は、ともすれば不平をささやき怯みを誘い、仲間同士のあらを挙げては不和を醸し、また、郷愁を覚えさすなど――あらゆる煩悩の弱点を衝いて、鉄壁の士気を潰乱しに蒐って来る。
— 吉川英治 『上杉謙信』 青空文庫