膏
あぶら
名詞
標準
文例 · 用例
五月の死びとこの生づくりにされたからだはきれいに しめやかに なまめかしくも彩色されてるその胸も その脣も その顏も その腕もああ みなどこもしつとりと膏油や刷毛で塗られてゐる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
『足を蹈んだのは僕が惡かつた、惡かつたから謝罪る、ねえ君、これは僅かだけれど膏藥代に、な、納めて呉れ玉へ、さあ』對手の心事、酒代にありと見て取つた若紳士は、事の組し易きを喜んで、手早く握つた銀貨、二枚、三枚、光る物手をすべつて男の掌に移るよと見る間に「呵」と叫んで紳士は身を轉換した。
— 萩原朔太郎 『二十三夜』 青空文庫
山を石膏細工の人形とすれば、雲は衣裳で、あのようにまで、モデルの肢節にぴったり合って、屈伸するものとは思っていなかった。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
彼の鼻は石膏細工の鼻のように硬化したようだった。
— 葉山嘉樹 『セメント樽の中の手紙』 青空文庫
その穴には、亜鉛化軟膏に似たセメントが填められる。
— 葉山嘉樹 『労働者の居ない船』 青空文庫
リノリュームが膏薬のように床板の上へ所々へ貼りついていた。
— 葉山嘉樹 『淫賣婦』 青空文庫
お前が夜更けて、独りその内身の病毒、骨がらみの梅毒について、治療法を考え、膏薬を張り、神々を祈願し、嘆いていることは、まだ極めて少数の赤ん坊より外知らないんだ。
— 葉山嘉樹 『牢獄の半日』 青空文庫
われ等の良心は幸にして膏薬を張つてないから、センシブルである。
— 葉山嘉樹 『工場の窓より』 青空文庫