齢六
としろく
名詞
標準
文例 · 用例
年齢六十に余る、鼠と黒の万筋の袷に黒の三ツ紋の羽織、折目はきちんと正しいが、色のやや褪せたを着、焦茶の織ものの帯を胴ぶくれに、懐大きく、腰下りに締めた、顔は瘠せた、が、目じしの落ちない、鼻筋の通ったお爺さん。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
太祖時に御齢六十五にわたらせ給いければ、流石に淮西の一布衣より起って、腰間の剣、馬上の鞭、四百余州を十五年に斬り靡けて、遂に帝業を成せる大豪傑も、薄暮に燭を失って荒野の旅に疲れたる心地やしけん、堪えかねて泣き萎れたもう。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
その人は齢六十路余に傾きて、顔は皺みたれど膚清く、切髪の容などなかなか由ありげにて、風俗も見苦からず、唯異様なるは茶微塵の御召縮緬の被風をも着ながら、更紗の小風呂敷包に油紙の上掛したるを矢筈に負ひて、薄穢き護謨底の運動靴を履いたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
むかしは齢六十にして尚ひとの徒弟として技を練ることを道と教えられていたが、当今は年季もまだ明けないうちからもう店出入りのことを考えている。
— 矢田津世子 『※女抄録』 青空文庫
『労働者生活』購読者はその死亡広告に現れる平均年齢六十九歳というタイムスの読者のように家庭医というものは持っていないのだ。
— 宮本百合子 『ロンドン一九二九年』 青空文庫
ゾシマ長老は年齢六十五歳で、生まれは地主階級だったが、ごく若いころ、軍務に服して、コーカサスで尉官を勤めていたこともある。
— 上 『カラマゾフの兄弟』 青空文庫
此処に奧木佐十郎と云って年齢六十に成る極く堅人がございます。
— 三遊亭圓朝 『霧陰伊香保湯煙』 青空文庫
これに由って観れば幽林が脚気を病んでその男典を伴い丹羽村の万松亭に還ったのは寛政二年庚戌の年でその齢六十五の時である。
— 永井荷風 『下谷叢話』 青空文庫