懽
懽
名詞
標準
文例 · 用例
ああ、なるほど、金沢の裁判所に……うむ、検事代理というのかい」 老いたる役員はわが子の出世を看るがごとく懽べり。
— 泉鏡花 『義血侠血』 青空文庫
」 かくと聞くより、盲人は飛立つばかりに懽びぬ。
— 泉鏡花 『取舵』 青空文庫
独り宮のみは騒げる体も無くて、その清き眼色はさしもの金剛石と光を争はんやうに、用意深く、心様も幽く振舞へるを、崇拝者は益々|懽びて、我等の慕ひ参らする効はあるよ、偏にこの君を奉じて孤忠を全うし、美と富との勝負を唯一戦に決して、紳士の憎き面の皮を引剥かん、と手薬煉引いて待ちかけたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
この身代を譲られたりとて、他姓を冒して得謂はれぬ屈辱を忍ばんは、彼の屑しと為ざるところなれども、美き宮を妻に為るを得ば、この身代も屈辱も何か有らんと、彼はなかなか夫婦に増したる懽を懐きて、益学問を励みたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
余りお気の毒ね」 彼の赤き顔の色は耀くばかりに懽びぬ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
学者の目からは、金儲する者は皆不正な事をしとるんじや」 太くもこの弁論に感じたる彼の妻は、屡ば直道の顔を偸視て、あはれ彼が理窟もこれが為に挫けて、気遣ひたりし口論も無くて止みぬべきを想ひて私に懽べり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
「お久しぶりで御座いました」 宮は懽び勇みて犇と寄りぬ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
増して、俺が今死ねば、忽ち何十人の人が助り、何百人の人が懽ぶか知れん。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫