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木立ち

こだち
名詞
1
標準
文例 · 用例
謹慎なる聴衆を容れたる法廷は、室内の空気|些も熱せずして、渠らは幽谷の木立ちのごとく群がりたり。
泉鏡花 義血侠血 青空文庫
あるいはまたあたり一面にわかに薄暗くなりだして、瞬く間に物のあいろも見えなくなり、樺の木立ちも、降り積ッたままでまた日の眼に逢わぬ雪のように、白くおぼろに霞む――と小雨が忍びやかに、怪し気に、私語するようにバラバラと降ッて通ッた。
国木田独歩 武蔵野 青空文庫
されど空気は重く湿り、茂り合う葉桜の陰を忍びにかよう風の音は秋に異ならず、木立ちの夕闇は頭うなだれて影のごとく歩む人の類を心まつさまなり。
国木田独歩 おとずれ 青空文庫
ああこのごろ、年若き男の嘆息つきてこの木立ちを当てもなく行き来せしこと幾|度ぞ。
国木田独歩 おとずれ 青空文庫
この哀れなる姿をめぐりて漂う調べの身にしみし時、霧雨のなごり冷ややかに顔をかすめし時、一陣の風木立ちを過ぎて夕闇|嘯きし時、この切那われはこの姉妹の行く末のいかに浅ましきやを鮮やかに見たる心地せり。
国木田独歩 おとずれ 青空文庫
自分は日あたりを避けて楢林の中へと入り、下草を敷いて腰を下ろし、わが年少画家の後ろ姿を木立ちの隙からながめながら、煙草に火をつけた。
国木田独歩 小春 青空文庫
家は小高き丘の麓にありて、その庭は家にふさわしからず広く清き流れ丘の木立ちより走り出でてこれを貫き過ぐ。
国木田独歩 青空文庫
騎兵ゆき過ぎんとして、後なる馬上の、年若き人、言葉に力を入れ『……に候間至急、「至急」という二字は必ず加えざるべからず』と言うや、前なる騎兵、『無論、無論……』と答えつ、青年の耳たてし時は二騎の姿すでに木立ちにかくれて笑う声のみ高く聞こえたり。
国木田独歩 わかれ 青空文庫