逢痴
逢痴
名詞
標準
文例 · 用例
伊右衛門はわっし、お岩は逢痴と、配役はざっとこんなもんでさあ」 と云って、彼はかたわらの逢痴と顔を見合せるのだった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
逢痴は、一座中の若|女形だった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
この逢痴には、はじめ二つの世界があった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
と云うのは、考えても考えきれぬような異様な撞着ではあるけれども、そうして、人魚に伝説の衣を着せ、美しい霧一重に隔てて眺めはじめてからというものは、どうしたことかそれまで軽い愛着を覚えていた、久米八に対する情が消え失せて、さらにしぶとい、燃えさかるようなそれを、今度は逢痴に求めるようになってしまった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
と云うのは、法水の推断によって、久米八が兄妹でないということになると、当然双体畸形の相手を、村次郎か逢痴かのいずれかに求めねばならず、はては、二人のいずれがそうであるか、またその結合のし方も、胸かそれとも、背中合せの薦骨のあたりではないか――とまで考えるようになってしまった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
まったく、その二つのものは、果しなく絡み合って、結局は見透しのつかない、雲層の中に埋れてしまうのであるが、またそうなって、双体畸形の片方が、もし逢痴である場合を考えると、彼の恋情にも、なんとなく怖れが出てくるのだった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
まだまだ、儀右衛門の心の中では、双体畸形のことはもちろん半信半疑であり、わけても、逢痴に対する愛着が、そうでなかれかしと秘かに祈るのであった。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫
それよりか、豊竹屋さん(逢痴の事)が双生児とは、そりゃまた、どうしたってことなんです」「なあ、私が双生児なんですって。
— 小栗虫太郎 『人魚謎お岩殺し』 青空文庫