射入
しゃにゅう
名詞
標準
文例 · 用例
破廂より照射入る月は、崩れし壁の骨を照して、家内|寂寞として墓に似たり。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
颯と照射入る月影に、お藤の顔は蒼うなり、人形の形は朦朧と、煙のごとく仄見えつ。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
同時に照射入る燈火の影に乱髪、敝衣の醜面漢、棍棒を手にして面前に来れり。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
綾子は照射入れる燈火に射られて、呀と叫びて跳上りぬ。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
山懐のところどころ、一帯に産出する蜜柑の林に射入る旭に、金色の露暖かなれど、岩の衝と突出でた海の上に臨んでは、路の下を掻い潜って、崖の尾花を越す浪に、有明月の影の砕くる、冬の朝まだ七時というのに、早や吉浜を過ぎ、真鶴を越して、江の浦さして行く途中。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
窓を争ひて射入る日影は斜にその姿を照して、襟留なる真珠は焚ゆる如く輝きぬ。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
十月下旬の日の光は玻璃窓から射入つて、煙草の烟に交る室内の空気を明く見せた。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫
(四) 日の光は斯の小屋の内へ射入つて、死んで其処に倒れた種牛と、多忙しさうに立働く人々の白い上被とを照した。
— 島崎藤村 『破戒』 青空文庫