山茶
さんさ
名詞
標準
文例 · 用例
ゑゝ言ふ事を聞かぬ我まゝ者め、何うともお爲と捨てぜりふ言ひて心ともなく庭を見るに、ぬば玉の闇たちおほふて、物の黒白も見え分かぬに、山茶花の咲く垣根をもれて、書生部屋の戸の隙より僅かに光りのほのめくは、おゝまだ千葉は寢ぬさうな。
— 樋口一葉 『われから』 青空文庫
山茶花の花びらは、桜貝。
— 太宰治 『新郎』 青空文庫
……湯気に山茶花の悄れたかと思う、濡れたように、しっとりと身についた藍鼠の縞小紋に、朱鷺色と白のいち松のくっきりした伊達巻で乳の下の縊れるばかり、消えそうな弱腰に、裾模様が軽く靡いて、片膝をやや浮かした、褄を友染がほんのり溢れる。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
七左 (襖の中にて)ここはまた掛花活に山茶花とある……紅いが特に奥方じゃな、はッはッはッ。
— ――其一幕―― 『錦染滝白糸』 青空文庫
が、用を言うと、「はい、」と背後むきに、戸棚へ立った時は、目を圧えた手を離して、すらりとなったが、半紙を抽出して、立返る頭髪も量そうに褄さきの運びとともに、またうなだれて、堪兼ねた涙が、白く咲いた山茶花に霜の白粉の溶けるばかり、はらはらと落つるのを、うっかり紙にうけて、……はっと思ったらしい。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
不思議な処へ行合せた、と思ううちに、いや、しかし、白い山茶花のその花片に、日の片あたりが淡くさすように、目が腫ぼったく、殊に圧えた方の瞼の赤かったのは、煩らっているのかも知れない。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
袂に包んだ半紙の雫は、まさに山茶花の露である。
— 泉鏡花 『みさごの鮨』 青空文庫
片褄の襦袢が散って、山茶花のようにこぼれた。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫