流れ渡る
ながれわたる
動詞
標準
文例 · 用例
つもっても知れる……世界を流れ渡る、この遍路芸人も、楽屋風呂はどうしても可厭だと云って、折たたみの風呂を持参で、奈落で、沐浴をするんだそうだっけ。
— ――(前題――楊弓) 『ピストルの使い方』 青空文庫
彼女は自分の弟子だけを引き連れて、それからそれへと流れ渡るようになった。
— 岡本綺堂 『明治劇談 ランプの下にて』 青空文庫
その下に真黒く横たわる谷郷村の盆地を冷やかに流れ渡る夜風に背中を向けた草川巡査は、来るともなく深良屋敷に通ずる国道添いの丁字路の処まで来ると突然、頭の上の天の河の近くで思い出したように星が一つスウーと飛んだ。
— 夢野久作 『巡査辞職』 青空文庫
これは、村から村へ流れ渡る――といふ意味の言葉である由だ。
— 牧野信一 『喜劇考』 青空文庫
おそらく村から村へ流れ渡る者の胸のうちには、それが何んな姿であらうとも切なる寂しさを抱かぬ者はあるまい。
— 牧野信一 『喜劇考』 青空文庫
郷里の家邸から地面をも瞬く間に飮んでしまひ、終には三十五年とか勤めてゐた西陣の主人の家をも失敗つて、旅から旅と流れ渡る樣になり、身體の自由が利かなくなつて北海道からこの郷里に歸つて來たのが、今から六年前の事であるのださうだ。
— 若山牧水 『山寺』 青空文庫
美しいもの、愛らしいもの、珍しいもの、そう云う限りない都会の美的富の種々を自由に、負担なく眺め、其等の形、色、線と音との微妙な錯綜から湧き出て心の裡に流れ渡る快感、空想、美の又異った一つの分野の蓄積が、何より嬉しい私共の獲物なのだ。
— ――ふるき市街の回想―― 『小景』 青空文庫
「子供には買えないという芸者になるお鶴と一日も早く大人になって遊びたい」 見る見る落日の薄明も名残りなく消えて行けば、「蛙が鳴いたから帰えろ帰えろ」 と子供の声も黄昏れて水底のように初秋の夕霧が流れ渡る町々にチラチラと灯がともるとどこかで三味線の音が微かに聞え出した。
— 水上滝太郎 『山の手の子』 青空文庫