口先だけ
くちさきだけ
表現名詞-の形容詞
標準
all talk
文例 · 用例
和尚さんが、どんな殊勝げな顔をして、どんなりつぱなことをいはうと、それは口先だけのことで、ほんたうの和尚さんがどんな人であるか、自分はちやんと知つてゐる、と菊次さんは心のうちでいつてゐました。
— 新美南吉 『百姓の足、坊さんの足』 青空文庫
」 喧嘩になると思つてゐた武助さんは、張合が抜けて、口先だけで、ものをいつてゐたのである。
— 新美南吉 『良寛物語 手毬と鉢の子』 青空文庫
支那めしが喰べられて」「久し振りに日本の方と会って大いに談じてますよ」「パパもいいが独逸の話だけはして呉れないといいなあ、ベルリンのことを平気でペルリン、ペルリンというんだもの、傍で気がさしちまう」「おなかじゃベルリンと承知してて、あれ口先だけの癖よ」 母子は逸作への愛に盛り上って愉快に笑った。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
だから、私の言うことを、口先だけの警戒と思ってはいけないのだ。
— 中島敦 『光と風と夢』 青空文庫
僕の自殺を非難し、あくまでも生き伸びるべきであった、と僕になんの助力も与えず口先だけで、したり顔に批判するひとは、陛下に菓物屋をおひらきなさるよう平気でおすすめ出来るほどの大偉人にちがいございませぬ。
— 太宰治 『斜陽』 青空文庫
そんなことを思ふと口先だけでは勢ひの好い虚勢ばかりを張つてゐるものゝ内心は至つて臆病な彼は、折角の若い日も滅茶苦茶になつてしまつた気がして、暗然とした。
— 牧野信一 『明るく・暗く』 青空文庫
」私は、もう頭までフラフラと酔つてゐて、たゞ口先だけが勝手にそんな下品なことを喋舌つてゐた。
— 牧野信一 『妄想患者』 青空文庫
口先だけの嘘を平気で云う弥助でさえが考え付かないほど、自分は卑しいのだと思うと、頭の上に輝いている晩春のお天道様が、一時に暗くなるような味気なさを味った。
— 菊池寛 『入れ札』 青空文庫