趣好
しゅこう
名詞
標準
文例 · 用例
コーヒーに限らず、デパートの商品でも、あのようにたくさんにあるものの中で自分の趣好に適合するものの少ないのに困ることがしばしばある。
— 寺田寅彦 『銀座アルプス』 青空文庫
他ならぬ谷崎ゆゑに引受けたが、本の表紙にしようとなると中々いい趣好が思ひ浮ばなかつた。
— 木下杢太郎 『本の装釘』 青空文庫
誰も彼もが金銀をつくして、贅沢を凝らしたなかに、ひとり中村内蔵助の妻は、尾形光琳の趣好で、打掛着付とも黒羽二重の無地、その下には白無垢を幾つも重ねてゐましたが、この方が見飽きがしないといふので、大層な評判をとつたさうです。
— 薄田泣菫 『雨の日に香を燻く』 青空文庫
紫蘇の紫にそれ程の趣好と用意とはなささうで、ことによつたら造化の絵具皿に紫の色しか残つてゐなかつた時の創造かも知れませんが、それにしても、色も香も紫づくめに塗りくつた放胆な意匠は季が季だけに充分の効果が見えます。
— 薄田泣菫 『雨の日に香を燻く』 青空文庫
またその人の性格がどんなに服裝の趣好のうちに表はれるかといふことも感じる。
— 竹久夢二 『砂がき』 青空文庫
その写真は乃木大将の少年時代からのことが仕組まれてあつて、まだ前髪をつけた乃木大将が淋しい田舎道を歩いていると、大入道や傘の一本足のばけものやその他いろいろのばけものが趣好をこらして入りかわり立ちかわり現われた。
— 伊丹万作 『私の活動写真傍観史』 青空文庫
定まった階段というものがなく、道が坂になっていて、途中二、三段位のゆるい階段が所々にあるきりで、自然と階上に行ってしまうという趣好が歩道にあるスリガラスの光りとりとともに評判であって、出品物も中々いいものがあり、何となく高級という感じを私どもが持っていたものである。
— 岸田劉生 『新古細句銀座通』 青空文庫
ある主観的な点の強調からの恋愛論やその反駁、さもなければ、筆者自身が大いに自身の趣好にしたがって恋愛的雰囲気のうちに心愉しく漫歩して、あの小路、この細道をもと、煙草をくゆらすように連綿とみずから味っている恋愛論である。
— 宮本百合子 『若き世代への恋愛論』 青空文庫