帰服
きふく
名詞
標準
文例 · 用例
試に今日世界のあらゆる知識に達しおる人が宗教的大煩悶を味い、遂に翻然一切を棄てて父なる神に帰服せしという心的経過を描きし小説または脚本あらば、これほど現代の人に強く訴うるものはあるまい。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
時が既に機を失したから兵を率いてでは無く、云わば帰服を表示して不参の罪を謝するためという形である。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
政宗は前に云った通り、まだ秀吉に帰服せぬ前に、木村父子が今度拝領した大崎を取ろうと思って、大崎の臣下たる湯山隆信を吾に内通させて氏家吉継と与に大崎を図らせて居たのである。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
昭和十五年七月廿八日神武天皇の御創業 皇孫|彦火瓊瓊杵尊が、天照大神の神勅を奉じ、日向の高千穂の※触ノ峰に降臨されてから御三代の間は、九州の南方に在つて、国土を経営し、民力の涵養を図ると共に、周囲の者どもを帰服せしめ、之を化育することに依つて、いよ/\興隆の基礎を築かれたのである。
— 菊池寛 『二千六百年史抄』 青空文庫
帰服はぬ者こそ、平定したが、天つ神の子孫が、この中つ国を支配すべき名分を信じて帰順したものには、最大の仁慈を垂れたまうたやうである。
— 菊池寛 『二千六百年史抄』 青空文庫
ところがお延のために征服される彼はやむをえず征服されるので、心から帰服するのではなかった。
— 夏目漱石 『明暗』 青空文庫
これ猴の豪い点また人からいえば欠点で、心底から人に帰服せぬもの故、ややもすれば不誠実の行い多く、犬馬ほど人間社会の開進に必要な役目を勤めなんだのだ。
— 猴に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
「イバン」の中に其主人公なるイバンの口を仮りて言はしむるところを見るに、イバンは兵卒を以て無用なるものと認め、敵ありて来り犯すに及びては満面の愛笑と懇情とを以て出でゝ彼を迎へ、遂に彼をして帰服せしめたる有様を叙するが如き、伯が平和主義の本領を推知するに余りあり。
— 北村透谷 『トルストイ伯』 青空文庫