表街道
おもてかいどう
名詞
標準
文例 · 用例
それにしてもひとり旅は不審、連れの者はいかが致した」「あの、表に、いいえ、表街道までじいやと一緒に参りましたなれど、ついどこぞへ見失うたのでござります」「じいやと申すと、そなた武家育ちか」「あい、金沢の――」「なに、加賀百万石の御家中とな。
— 日光に現れた退屈男 『旗本退屈男 第八話』 青空文庫
「ようよう、あなた、おのろけを聞かして頂戴よ……今までの罪ほろぼしに、よう」 両国の宿屋では、軒を隔てて、こんなもだもだの宵の口――車返しへ通ずる表街道は、こんなものではありませんでした。
— 不破の関の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
なお、その番頭さんの言うことには、表街道が物騒がしいようだから、裏街道を通るつもりでしたけれども、こうして、兄さんにここでお会いしてみれば、どうもわざわざ裏廻りをするのはやめにして、やっぱりもと来た大通りを帰りましょう。
— 胆吹の巻 『大菩薩峠』 青空文庫
大将だの大臣の正体がバクロされて檻につながれ、世は変り、こゝに郡山千冬も真人間となる時がきたので××社の編輯記者となり、この雑誌社は裏街道ではないやうで、どうやら人間の表街道へ現れるに及んで、なるほど世の中は根柢的に変つたんだなアと私は彼を眺めて世のたゞならぬ大変転に気付いたのである。
— 坂口安吾 『足のない男と首のない男』 青空文庫
人生の表街道のものではなく、裏街ですらもなく、他人にそう邪魔にならない路傍か隅ッこにころがっていて、グロテスクではあるがバカバカしいだけの存在だ。
— その一〔判官巷を往く〕 『安吾人生案内』 青空文庫
その昔――というほど遠くもない、永禄、元亀、天正へかけての武田、上杉、北条、その他の交戦地であった軍用路を、そのまま後の旅人が往還しているだけで、従って、裏街道も表街道もありはしない。
— 空の巻 『宮本武蔵』 青空文庫
実際、わたしは子供の頃からいつも明るい表街道を通るように教えられたので、従って子供同士の遊戯の中でさえこすいことずるいことをやるのが嫌いだったので、――まったく子供の遊戯は遊戯ではないと知らなければならない。
— ESSAIS DE MONTAIGNE 『モンテーニュ随想録』 青空文庫